本を読もう
本題に入る前に、ひとつ質問です。
みなさんは月に何冊の本を読みますか?
そこの嫌な顔をしたあなた。その感覚は正解です。
読書の才能があると思いますよ。
実際、この問いは不毛です。たぶん、この問いが大好きな大人は本を読んでいません。質問返ししてみたらよいともいますよ。きっと嘘をつくか、最近は忙しくて読めていないなどと情けない言い訳を吐くので。
だって、読書の冊数は本質ではないのですから。読んだ本の数に比例して人間の価値が上がるなら、学校なんて通う必要がありません。
書籍の優位性とは
さて、本題に入ります。
今回、私が主張したいのは、「情報収集の手段として」の書籍の優位性についてです。
ぶっちゃけた話、いいんですよ、別に。本なんて読まなくても。実際問題、YouTubeもインターネットもSNSも情報収集のツールとして優れていますから。
「読書」そのものには価値はありません。ただがむしゃらに本を読めばよいわけではありません。意味のない読書は、惰性で行うネットサーフィンとなんら差はありません。
それでは、意味のあるものにするにはどうすればよいのか。
持論ではありますが、その答えの一つは「目的を持つこと」です。
難しいことはありません。「何を得たくて本を読むのか」を明確にすれば良いだけです。
たとえば、純粋に物語を楽しみたいから小説を読む、作家の哲学に触れたいから小説を読む、習得したい技術があるからビジネス書や参考書を読む、純粋な知識の集積のためにとにかく本を読み漁る……といった感じです。
読書とインターネットと差別化できる部分は、本からは「体系化された知識」を得やすいことに尽きると思います。
情報の正確性が……などという大人もいますが、確かに確率の問題で言えば書籍の方が正確な情報に出会えることが多くなるのでしょうが、情報の新陳代謝が早い現代、書籍の情報が間違えていることも往々にしてあるため、決して本だけに許された特性ではないでしょう。情報が正しいかどうかを判断する能力は、メディアにかかわらず必要です。
ピンポイントで欲しい知識があるときは、ネットはとても有用です。たとえば、『天気の子』の監督の名前を知りたいと思いたったとき、インターネットで検索をかければすぐに、新海誠監督だとわかります。例がわかりにくいですね。
じつは、ネットのこの強みは読書でも生きてきます。本の中でどうしても理解できない記述が出てきたとき、本の中の記述ではものたりなかったとき、本の中の情報がそもそも誤っていたとき、などなど、本の情報を補強するためにインターネットは活躍します。グーグル先生にはいつもお世話になっております。
あともう一点、インターネットは速報性という観点でも非常に優れています。これはわざわざ語る必要はないと思いますが。ゲノム編集について調べたいのに、CRISPR-Cas9について書かれていないような骨董品を用いていては、手段を履き違えていると言わざるを得ません。
でも、例えば「SDGs」を「ビジネス」に「応用」したいとき、本は有用になります。
ここで求められているものが「体系化された知識」だからです。複数の情報を統合した情報が欲しいとき、インターネットではいくつものサイトを何時間もかけて比較しなければなりません。そんなとき、その道のプロが書いた本を1冊だけ見つけてくれば、大筋を一気につかむことができます。ここに読書の強みがあります。
自己流速読術
「でも、時間がなくて本なんて読めない」という方に、いくつか私が実践している読書法を紹介します。
1、読む前に巻末の発行年月日を確認する
この作業によって情報の鮮度を確かめることができます。残念ながら、世の中には「賞味期限切れ」の情報が存在します。先端科学の分野などに顕著ですが、とにかく情報の新陳代謝が早い。そこで、発行年月日を調べることで、いわゆる「ハズレ」を引いてしまう可能性が下がり、より効率的なものにできます。
ただ、発行年月日が古い本はすべて価値がないかというと、もちろんそのようなことはありません。目的によって選ぶべき本は変わってきます。それに、世の中には、情報鮮度が落ちにくい本、いわゆる「ベストセラー」もあります。頻繁に増刷がかかっているので見分けるのは簡単です。
2、目次を読み込み、書いてある内容を予想する
既に知っている部分を読み飛ばすことができます。目次だけで想像できるような内容ならば、時間がない時にわざわざ読む必要はありません。
3、助詞を読まない
「は」「に」「を」などの助詞を無視し、文の繋がりはなんとなく脳内で補完して読みます。やってみると、案外、簡単です。
速読を学んだことはなく我流なので、後ろ二つは参考までに。
情報収集のみが目的ならば、1文字ずつ丁寧に精読する必要はありません。つまらない部分は適当に読み飛ばしましょう。
おわりに
最後に、個人的な話ですが、私は「読書は対話である」と考えています。
よい本は自分の主観では見えなかった世界を見せてくれます。自分の世界をぐっと広げてくれます。それは単純に、本の中にある新しい知識から得られるものではありません。著者が選んだ言葉の一つひとつには、著者の本当の意図が込められている。ここを想像しながら読むと、読書は一層深いものになります。ここにはいないはずの著者を、すぐ目の前に想像できる。時間や場所を超えて友情すら感じることもある。
そこに一番の読書の価値があると私は思っています。
退屈な秋の夜長に、あなたにとっての珠玉の一冊を発見してみてはいかがでしょう。