じぇねろぐ。〜for new generation〜

世界のこと、留学のこと、ありのままに

「お茶の間」のはなし

 みなさまお疲れ様です。時代も変わり、10連休は非情にも私に何も残さず過ぎ去っていきました。いかがお過ごしでしょうか。

 

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新鮮な巡り会い、シンプルな感情。

 

 これまで、私たちはインドネシアで過ごした短くも濃密な1週間の思い出を、ごく断片的に書き留めてきました。

 インドネシアを訪れてはじめて見たもの、知ったこと、そして、感じたこと。それらを想起し、もう埃がうっすらと積もってしまった記憶を引きずり出し、足りない語彙を絞り出して、なんとか文章を書くたびに私は思います。

インドネシアはなんていい国なんだ。」と。

 そして、人生のこのタイミングでインドネシアに行けたことの幸せを噛み締めるのです。

 

 インドネシアは、それくらい「いい国」です。

 

 でも、私は行く前からインドネシアが好きだったわけではありません。

 

 語弊があるので言い直します。渡航前、私はインドネシアについて何も知らなかった。何も知ろうとさえしていなかった。

 

 だからでしょうか。インドネシアで見たもの・食べたもの・出会った人々。それらすべてが私の目には、新鮮に映りました。

 現地の方々は暖かく歓迎してくださり、私の知り得ないところで、見ず知らずの私たちをこんなにもよく思ってくれている人たちがいることを実感しました。

 すべての物事には理由があるとはよく言ったもので、これにもきちんと理由があるのですが、そんな小難しくて退屈な話はひとまず棚に上げておいて、そのことが、嬉しかったんです。ごくシンプルに。

 

 想像してみてください。

 

 初めて行く場所。当然、自然に用いている言語も通じない。そこで「日本の魅力発信」というミッションを与えられ、英語でプレゼンをしなければならない。プレゼンの準備も不十分で、お世辞にも面白くない。

 正直、不安しかない状況です。

 そんなことを考えながら現地の大学に到着しました。ダルマ・プルサダ大学という私立大学です。学生さんたちは、私たちが会場に入り席に着くと、笑顔で話しかけてくれました。

 このことがどれだけ私の不安を解消してくれたことか。

 昼食を食べながら、あるいは帰り際に別れを惜しみながら、彼らとたくさんのことを話しました。彼らが日本に来たときのこと、オススメのインドネシアの食べ物(たいてい、彼らはドリアンを勧めた)、好きなアイドルのこと。

 月並みな話ばかりだったような、そうではなかったような、今では鮮明に思い出すことさえできません。しかし、あたかも旧知の仲であったかのように、一日中、話が尽きることはありませんでした。

 楽しかったという感情や嬉しかったという感情だけは、忘れることができません。

 

 他の日も他の場所でも、現地の方々は同じように暖かく歓迎してくれました。

 

 こんなの、嬉しくないわけがない。

 

 しかし、嬉しかったのと同時に後悔しました。恥ずかしく思いました。なぜ、世界にはこんなにもいい場所があるということを知ってさえいなかったのか、と。

 

身近に感じるということ

 

 これは、単なる私の感情的な話です。

 

 このブログをお読みいただいている方々は、インドネシアという国についてどれくらい知っていますか? 

 

 インドネシアでは日本がリスペクトされていることとその理由。

 日本はインドネシアにとって最大のODA提供国であること。ODAによってインフラ整備や人材育成に貢献してきたこと。だから、日本が作ったものが現地にはたくさんあること。ODAのみならず、日系企業や民間による投資も進んできていること。

 そして、日本とインドネシアは距離が近いこと。インドネシアには世界で2番目に多くの日本語学習者がいること。

 また、インドネシアの料理は日本人の(少なくとも私の)口に合い、すごく美味しかったこと。

 正直、とっつきにくい話題だし、イメージも湧きにくい。

 

 書き出したらキリがありませんが、私はこんなことは少しも知らなかった。知っていたことといえば、東南アジア諸国親日国家らしいということくらい。

 あるいは、私が常識に欠けているから知らなかっただけかもしれません。アンテナが低かったから、勉強不足だったから、知らなかっただけかもしれません。

 かもしれません、ではなくて、おそらくその通りなのでしょうが。まあ、それでも、日常生活に不便したことはありませんでした。

 

 私はお世辞にも、国際的なトピックに興味のある、いわゆる「意識の高い」子どもではありませんでした。

 でも、アメリカの大統領の名前は知っています。TPPが発行されて、なにやら騒動があったことも記憶に新しいです。そして今も、関税をめぐり中国とやりとりを重ねていることも報道されています。話題に欠かない国です。インドネシアよりもよっぽどアメリカに詳しい、という人も決して少なくはないでしょう。

 

 なぜでしょう。

 理由の一つは、これらの話題が、いつも晩御飯を食べているとき、なんとなくお茶の間のTVから流れているからではないでしょうか。それも、毎日のように結構な頻度で、それなりに長い尺をかけて重く報道されているからではないでしょうか。

 

 インドネシアという国について少しだけ知ることができた今、ひとつ思っていることがあります。

 インドネシアと日本の美しい関係が、「お茶の間の話題」にあがるような、そんな自然で当たり前なものになったらいい、と。

 まるで日本とアメリカの関係のように。

 

 アメリカンでジャンキーな宅配ピザが夕飯の食卓にあがるのならば、ナシ・ゴレンが同じように食卓に上がる日が来てもいいのではないでしょうか。ニューヨークの話題が自然に上がるのなら、ジャカルタの話題も同じように上がってもよいのではないでしょうか。

 

 インドネシアを、それくらい身近な存在に感じてみませんか。

 インドネシアに限らず、国名と人気観光地しか知らないような国のことを、もっと身近に感じてみませんか。

 

 見える景色がすこしだけ、かわるかもしれませんよ。